
Knock knock Who's there?
カチャ・・・16番目の窓が開く
ねぇねぇ そう言えばさ
あのネコのお話の続きは どうなったんだっけ?
去年は おばぁちゃんお話してくれなかったよね
ねぇねぇ おばぁちゃん
サンタになりたかったネコのお話の続きは?
続きはあるんでしょ?
Andrea Bocelli - Ave Maria

何だい お前たち
まだ覚えていたのかい?
あぁ もちろんあるともさ

それじゃぁ 暖炉の傍に毛布を持っておいで
風邪をひいたら大変だ
暖かくして 蜂蜜入りのホットミルク飲みながらお聴き
は~い♪

あれからネコは 随分と考え込んでいたようだ
たったひとつのプレゼントを何にすればいいのか
そうしてね 或る凍て付いた夕暮れ
その日は山から雪雲が押し寄せて来てね
大地と空の隙間がほんの少ししか無くて
このまま世界は凍り付いてしまうんじゃないかと思うほど
冷たい耳が切れるような風が吹いていたんだ

ネコはね 考えてばかりじゃちっとも決まらないから
心に届いた誰かの祈りを 順番に書き出してみたんだよ

誰もが夢を持って 明日を楽しみに生きられますように
お腹を空かせて辛い思いをしている子が 安全な食べ物で満ち足りますように
一生懸命に働いたら ちゃんと家族を養える世の中になりますように
子どもを叩いてしまう人が 抱きしめ方を教われますように

箱舟から零れ落ちて行くような 命の振り分けがされませんように
人の状況は平等ではないけれど 心は平等に生きられる世の中でありますように
後ろを振り向く時はやさしい気持ちで 前を向いている時には毅然としていられますように
世界が苦しい時に 支え合える心を持てますように

不安が大きくなって 人が傷つけ合いませんように
長く闘っている相手を忘れ いつの間にか闘っていることも忘れ
すり替えられ 胡麻化され 今の敵よりも大きな敵が生まれませんように

ねぇ おばぁちゃん 随分いっぱいだね
そんなにあったら サンタさんには何も出来ないんじゃない?
そうだね・・・ただでさえ今は世の中に祈りが溢れていて
サンタさんたちは 子どもたちの願いを全部聴いてあげることも難しい

それじゃぁネコは どうしたのおばぁちゃん
まずね 声に出されて読まれた祈りを聴いたんだ
声に?
あぁ 声に出されると消えてしまう祈りもあるんだ
そうなの?
だって それを聴いて私が寄り添えるって言う人が現れたりするだろう?
うん そうだね
それとは逆に もっとたくさんの人で祈らなくてはと言うこともあるだろう?
うんうん そうだね

そうしてネコは 一番か細くて小さい声を探すことにしたんだよ
どうして?
だって 誰にも聴こえなかったらその祈りは哀しいだろう?
そこに在るけど見えなかったら 誰も気が付かないだろう?
ネコにだけ聴こえた祈り?
そうだよ ご縁があった祈りだよ
ネコには見つかったの?
あぁ 見つけたらしいね
天国に行く前にプレゼントを届けているらしいよ
じゃぁ ネコはサンタになれたんだねおばぁちゃん
そうだね ネコは張り切って届けているらしいよ
だから 中々天国に行く暇はなさそうなんだよ
えっ? だってたったひとつだけだって言ったじゃないの

たったひとつ の意味は色々あるんだよ
お前たちにもきっと いつか分かる日が来るだろう
おばぁちゃん 今教えてよ
おばあちゃんには教えてあげられないんだ
それは 自分にしか気付くことが出来ないことだから
え~っ そんなのズルいよ
教えてよおばあちゃん
ねぇねぇ 気になって眠れないよおばぁちゃん
さぁさぁ このお話はこれでお終いだ
外はだいぶ冷えて来たね
明日は雪が積もるかねぇ・・・
お蒲団をちゃんと掛けないと 風邪をひいてしまうよ
大丈夫だよ お前たちにも必ず分かる日が来るから
ゆっくりお休み また明日ね・・・
まり