Leon Fleisher "Jesu, Joy of Man's Desiring" J. S. Bach
寒い寒い 吹雪の夜に
遠い遠い国の 物語
こんな夜には 雪見酒より
あったかい火鉢で お餅でも焼きながら
お話でもしましょうね・・・
ある国にね 途中に踏切もあるくらい
長いながーいテーブルがあってね
両端に それぞれ 男と女が座っていたんだ
とても遠いからさ 女が熱いお茶を淹れても
男が飲む頃には 冷たくなってしまう
美味しいお料理をこしらえても
男が食べる頃には 冷めちゃうんだ
小人たちが 一生懸命運んであげるんだけどね
それでも 遠すぎるんだよ・・・
あったかいストーヴの火も 男には見えない・・・
女は哀しくて 何とか この距離を縮める方法はないかと考えた
でもさ そんな方法は何処にもないんだよ
女は思い余って お山にいる神様に相談に行ったんだ
神さまは 優しく仰られた
おやおや こんな山奥まで よく来たね
それなら 雪の結晶の涙を出来るだけたくさん持っておいで
そうしたら 光のテーブルクロスを作ってあげよう
女はね 雪の結晶の涙を 一生懸命集めたんだ
来る日も来る日も 掌で受けて 瓶に集めたんだよ
瓶が涙でいっぱいになるのに 一年も掛かったんだ
神さまは 約束通り 光のテーブルクロスを作ってくれた
テーブルにね ふわっと掛けてみたら・・・
どうなったと想う?
それが 不思議なことにさ
瞬間に 心が感じるようになったんだよ
まるで ふたりで 小さな火鉢にあたっているようにさ
すぐ 傍にいるみたいに 感じるようになったんだ
あれっ?・・いつの間にか寝ちゃったんだね
今夜は 特別冷え込んでるから
毛布を もう一枚 掛けてあげようね
おやすみ・・・いい夢を見てね
まり