Dvorak - Romance for piano and violin, Op.11

さて 少し丘を登って向こう側に生きましょうか

あれ? こっちには何もありませんね

あっ! 城下が見えます
大昔は 此処からどんな景色が見えたのでしょう
今よりもっと田畑が広がった 緑の多い景色だったのでしょうね

あっ 見て見て お陽さまが射して来ました

あの靄はなぁに?

この樹だけが 蒸気をあげています
沢山の樹々があるのに どうして一本だけなんでしょう?

沢山の仲間の中で そっと濡れそぼった体を
お陽さまの暖かな光で乾かしているように見えます
同じように雨に濡れても 霧に巻かれても
樹々はそれぞれに 違った恵みがあるのかも知れません
肌の硬さや 古さや 質は
雨を弾いたり 霧を含んだり みんな違うのかも知れません
きっとね・・・

でも みーんな光が好きです
陽陰にいると 光の道がよくみえます
朝陽の素晴らしさを 知らない人は少ないでしょう

あぁ・・・ 光のシャワーです
ねぇ 早く早く
ほら 掌で受けて下さい
あぁ・・・ほら・・・
命のお洗濯をしましょうね

あ・・・もみじもシャワーを浴びていますよ
素敵・・・藤城清治の影絵のように透けています
両の腕をいっぱいに開いて
あなたの光を受けよう
時々 弾き
時々 沁み込み
時々 透けて
幹の芯まで
細根の先の先まで
光を吸い込み
光を吐き出し
樹は 自我を蒸発させ
光の中に帰ってゆく
大いなる魂の故郷へ
まり