Sophie Milman - Ochi Chernye

例えば水面に ぽたぽたと滴り落ちていたとしても
時の雫を 一滴ずつ掬ったりはしません

流れてゆく 川の其処此処に
無用な堰を 拵えたりはしません

私は 無重力の夢殿の中に浮かび
時の花びらを 糸に織り込み機を織ります
そうして私と言う生地が 一反の織物になってゆく
汚れあり 傷あり 縒れあり ほころびもあり・・・
出来上がったなら この一反でチクチク着物を仕立てます
胸に月花を縫い留め 晴れの旅立ちの衣装を仕立てます

振鈴が鳴り響きます
私の脳幹を伝い 身体中を起こします

只管打坐の心境で 自分の中を覗きます
だけれど何も見えません
糸のほつれが気になるだけで
生地の汚れが目に付くだけで
他には何も見えません

私の魂の根幹は あるようにしてそこにあり
一ミリも微動だにせず 岩のように固まって
𠮟責のそのままに 哀憐のそのままに
パタパタトントン機を織ってゆくのです

我想う・・・
昨日を想い今日を想う
そうして明日を想うのでしょう
故に我があり・・・きっとね・・・
まり