
雲は流れず 行ったり来たり
月は ばつが悪そうに隠れたまま
ほんの僅かな光は 花を照らしそびれ
花は再び 目を閉じる

月に叢雲 光は消えて

花は寝たまま 風に散る
Taeko Onuki & Ryuichi Sakamoto - 10. 四季 Shiki

空から降りた 魂が
艶やかな曲線を滑り 空へと帰す
唯それだけの事なれば
心は何処に残りましょう

雨の日の曼珠沙華は切なくて
咲き始めの花ならば 艶も乗り雫も美しいけれど
終わり掛けの花ならせめて
気付かれぬうちに 草の褥に埋もれたかろうか

人は ひとりで生まれひとりで死んでゆくと言うけれど
言祝ぎの門を潜り 旅の始まりを憂いては涙し
惜別の情に見送られ 旅路の終わりを迎えるものだと思っていました
田舎では特に 黙って逝く事がまるで罪のように責められた
少なくとも つい二・三年前までは・・・
それが今では 家族葬や密葬が多く望まれているように感じる今日この頃

七月に 隣のおばぁちゃんが救急搬送され入院
それからは 毎日のように隣の方の介護ストレスのお話を
塀越しに聞かされては居ましたが
話す事で 少しでもストレス解消になってくれたらと
時間の許す限りは 聞いていました
でもある日からぷっつり 隣の方は姿を見せなくなりました

何日か過ぎた真夜中に おばぁちゃん亡くなっているかも・・・
突然 そう感じて不安になりましたが
別段 変わった様子もないまま一カ月程経ったある日
お庭で草むしりしていた隣の方を見かけ
おばぁちゃんの具合を尋ねると 一カ月ほど前に亡くなったと言われ・・・
最後のお別れも 出来なかった・・・

誰にも知らせていないし 誰からも何も言われたくないし
お返しも面倒くさいし 誰にも言わないで下さいと言われ
死が 個人のものになったのだと感じました
田舎暮らしをしてから こんな事初めてで
スープの冷めない距離に居ながら
義父をひとりで逝かせてしまった罪悪感を
これでもかとばかりに増殖させた
田舎の人たちの噂話や批判も
今なら 受けずに済んだのでしょうか・・・
人の関係性も薄まり続け
やがて人も 音もなく消えてゆく時代が来るのでしょうか・・・
物凄く 寂しくなっちゃった・・・

死は 箱の中に仕舞われて
あなたは 永遠に微笑んでいる
ポンと跳ねる 太鼓は鳴らず
曲線の上を 行ったり来たり
もはや さようならと言う事も無く
まり