
お台所の蒸篭から 蒸気が上がると
湯気の向こうの景色が ぼんやりと暖かくなる
何を蒸かしているのかよりも 蒸かしていることが
何とも言えないゆったりした時間に感じ
ちょっと幸せな気持ちになる
Howl's Moving Castle Theme for Solo Piano HD

夕暮れに 彼方此方の家の勝手口から
まな板に当たる 子気味の良い包丁の音やら
菜を洗う 勢いのある水道の蛇口から出る水の音
魚を焼く 少し焦げた香ばしい匂いや
炒め物のパチパチ爆ぜる油の音なんかが聴こえ
さぁ 今夜は何を作ろうかねぇ・・・
昭和の下町の夕暮れは いつも賑やかで
家に帰る足取りも 急ぎ足
また明日ね―!なんて手を振り乍ら
路地を抜け近道をしながら
一人また一人と友だちがばらけてゆく
あぁ・・・何だかこんな夕暮れは
子どもの頃を思い出しちゃうな

夕暮れの花たちは 思い思いに花びらを少し閉じて
冷えて来る夜温から 或は冷たい夜露から
虫たちを守ってやろうとしているのかも知れない

秋桜のお花は ずっと空を仰ぎっぱなしで
首が痛くなったりしないのだろうか?
なんて思ったりする
こんな強さが 自分にも欲しいものね

さぁさ 蒸けたかな?
季節のものだから 一度くらいは作りたいじゃない
えっ?栗ご飯が良かったの?
だって 栗や薩摩芋を入れると新米の艶が消えちゃうんだもの
私は もち米のおこわの方が好きよ
今夜は 栗入りのお赤飯にしましたよ

畑で採れたものばかりですけど
衣被も蒸したから お塩で食べてね
鮭のハラスは 焼浸しにしました
お漬物は 白菜が採れたので浅漬けに
二十日大根の甘酢漬けも付けて
蕪も採れたから お味噌汁にして
何だか 秋の収穫祭みたいね
まだ紅葉も ちゃんと観に行ってないのに
暦の上では もうすぐ秋も終わっちゃうんですねぇ

だってもう シクラメンがお庭の仲間入りですもの
嫌ぁね・・・すぐに年の暮れよ
また歳をとっちゃうわ・・・

季節のものを おいしく頂いて
元気に過ごさなくちゃね

今が一番良い時なんだから・・・
まり